ブレインコンピューティングを用いた合鴨農法におけるカラス撃退システムの開発

合鴨農法

 合鴨農法は水稲作において合鴨を利用して減農薬・無農薬を実現する方法の一つである. 合鴨農法では田植えの時期に合鴨を水田中に放飼いする. 放飼された合鴨は稲以外の雑草や害虫を餌とし,排泄物が稲の養分となる. このため合鴨農法は,無農薬農法で問題となる雑草や害虫の駆除における農家の負担を大きく減らすことができる. さらに,成長した合鴨を食肉用として出荷できるため,コストパフォーマンスに優れた農法である.

合鴨農法における問題点

 しかし,合鴨が野犬,たぬき,カラスなどに捕食されるという鳥獣害も相次いでいる. 合鴨は一つの田んぼに数十匹から数百匹を雛のうちに放飼する. 合鴨の雛は鳥獣の攻撃に対応できないため被害も拡大し,場合によっては全滅することもある.
 このため合鴨を天敵から守る対策として,電気柵を用いる方法が合鴨農法の第一人者である古野隆雄氏により確立されている. 電気柵により地上から合鴨を狙う獣害はほとんどなくなった.しかし一方で,空から合鴨を狙うカラスには未だ効果のある対策が見いだせていない. カラスは非常に知能が高いため,カカシやテグスなどでは防除効果が低い. また音や光で定期的に威嚇する装置も開発されているが,カラスが音や光に慣れるため,効果的な防除効果が得られていない.

カラス撃退システムの開発を目指して

 そこで本研究では合鴨農法におけるカラス被害をなくすためのカラス撃退装置の開発を目指している. 具体的にはカラスの「防除手法や装置への慣れ」をなくすため,カラスが攻撃行動や採餌行動を起こす瞬間を認識し, 適応的に光や音で忌避的刺激を与える装置を開発する(図を参照). この装置の最重要部は,カラスの行動に反応する賢いセンサ(スマートセンサ)であり,現在スマートセンサの開発・研究を行なっている.


 スマートセンサの開発の一環として,ビデオカメラに映ったカラスを追跡し,カラスの行動パターンで採餌行動かどうかを判断する方法を提案した. カラスの追跡している様子は以下の動画をご覧頂きたい.

関連プロジェクト

  • 本研究は,一般財団法人ファジィシステム研究所との共同研究として実施されている.
  • 財団法人電気通信普及財団研究調査助成 
    平成22年度 「合鴨農法のための動画像認識技術による害鳥の行動分析と行動適応型防除システムの構築」
  • 財団法人ファジィシステム研究所 共同研究 
    平成21年度 「計算知能を用いた動画像処理に関する研究」